ヤクルト清水昇が失敗を糧に急成長。プロ初勝利にこだわらない理由とは

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

◆八重樫幸雄が選ぶヤクルトベストナイン>>

 ヤクルトの高津臣吾監督が就任時からよく言っている言葉がある。

「選手たちにはいいことも悪いこともたくさん経験して、少しずつ成長していってほしい」

 どちらかといえば、「悪いことをたくさん経験して」の部分を強調しており、高津監督からしてみれば「失敗を恐れるな」という意味である。

「去年、チームは大きな失敗を経験しているので、そこが基礎・基盤ですよね。プレーする前にミスを怖がってほしくない、投げる前に打たれるイメージをしてほしくない、打席に入る前に打ち取られることをイメージしてほしくない、試合前に負けるイメージをしてほしくない。選手たちには、去年負けたことが当たり前じゃない、試合で失敗したことは当たり前じゃない。そう捉えて、考えてほしいんです」

今季、ヤクルトのセットアッパーとして好投を続ける清水昇今季、ヤクルトのセットアッパーとして好投を続ける清水昇 こうした高津監督の言葉を聞いて、真っ先に名前が浮かんだのが2年目の清水昇である。即戦力として期待された"ドライチ右腕"のルーキーイヤーの成績は、11試合に登板して0勝3敗、防御率7.27。

 そんな清水が多くの失敗を糧に、今シーズン目覚ましいピッチングを続けている。

 今年、春季キャンプで清水はこんなことを語っていた。

「1年目よりは、自分のなかで手応えはあると思っています。そういう意味でも、去年の経験はすごく大きかったですね。ある意味、中途半端な悔しい思いじゃなくてよかったと思っています。正直なところ、去年はどんなかたちでもいいから1勝したいという気持ちがありましたが、逆に0勝だったからこそ、新しい気持ちでスタートできている部分があります」

 取材したのはキャンプ終盤で、その表情は充実感に満ち溢れていた。

「去年はプロ野球の厳しさと1球の怖さを感じました。『いい球だ』と思ったものが外野の頭を越えたり、フェンスオーバーになったり......僕はいいボールでアウトを取りたがっていた部分が強かったので、もっと視野を広くして"アウトが取れる球"をもっと知る必要があったと感じています。極論を言えば、どんなかたちでもアウトを取っていきたい。50点のボールでも100点のボールでも、どっちでもアウトを取れる投球をしたい」

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る