ヤクルト清水昇が失敗を糧に急成長。プロ初勝利にこだわらない理由とは (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 7月23日の阪神戦(甲子園)。清水は1点リードの8回裏に登板したが、サンズに同点本塁打を浴び、福留孝介には逆転2ランを被弾した。敗戦投手になるとともに、連続無失点も11試合で途切れたが、すぐに気持ちを切り替えることができた。

「いずれ打たれるかなと思っていたのですが、ああいう厳しい場面で投げて打たれたからこそ悔しかったですし、『次こそは......』という気持ちになれました。あの試合で打たれたことが、いま自分が頑張れているポイントでもあります」

 清水への信頼感は、投げるたびに増している。カウントを悪くしても、ランナーを背負っても、自分の役割をしっかりと果たしマウンドを降りる。

「一番は低めに投げる意識だと思います。ボールが高めに浮いてしまっても、低めに意識がある分、相手も打ち損じしてくれます。低めに投げ続けることは、自信になりました」

 今シーズン、寺島成輝、長谷川宙輝、ルーキーの吉田大喜がプロ初勝利を飾ったが、清水はまだ手にしていない。去年は「どんなかたちでも1勝したかった」と語っていたが、今はどんな心境なのだろうか。

「気持ちとして、1勝したいのはあります。でも、やっぱり自分に勝ちがつくということは、点を取られることですから。自分の勝ちよりも0点に抑えること、もしくは点差を縮められないことを意識したいと思います。大事な場面で投げさせてもらえることに感謝して、これからも投げていきたいです」

 清水について、高津監督は「ひとつひとつのボールに意図が感じられますね」と評価する。

「去年は『いい球を投げたい』という気持ちが強すぎて、それが空回りしてしまいました。今はキャンプから課題にしていたどんなボールでもアウトを取ろうと、1球1球を意識して投げています」(清水)

 いいことも悪いことも経験しながら、清水はものすごいスピードで成長を続けている。

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