解説者5人の「広島・森下暢仁論」。
マエケンなみの高度な投球術 (2ページ目)
◎川口和久氏
よく大学・社会人から入った選手は"即戦力"と言われますが、本当に戦力として使えるのは、じつはそれほど多くありません。いいものは持っているけど、荒削りという投手が結構いて、これでは一軍レベルで使うのは難しいんです。アマチュアならアウトコースに150キロ近いボールを投げられたら、そうは打たれないと思います。でも、プロはそれだけでは通用しない。どれだけ恐れずにインコースを投げられるかが大事になってきます。
そういった点で、DeNA戦でプロ初先発を果たした森下のピッチングは圧巻のひと言です。打者の左右に関係なくインコースを突けていましたし、高低でも勝負できていた。タテのカーブが特徴的ですが、カットボール、チェンジアップなど、すべての変化球がカウント球として使えるし、勝負球にもできる。1年目でこれだけのピッチングをできる投手は少ないと思います。
不安があるとすれば、あの投球フォームでスタミナが持つのか......ということです。森下の投げ方は、左足を上げてから、上体を反らすようにして背筋に体重を乗せて投げます。そうすることでボールに力が伝わり、角度もつく。
その一方で、あのフォームは背筋と腹筋のバランスが重要で、どちらかが弱くなるとボールが浮いて抜けやすくなり、シュート回転しやすくなる。それに球の出どころが見やすくなるリスクもある。そうなるとボールにばらつきも出るし、バッターからすれば打ちやすくなります。とくに夏場、どれだけコンディションを整えて投げられるかでしょうね。そこをクリアできれば、2ケタは確実だと思います。
あと、森下はバッティングもすばらしい。開幕戦でチームメイトの大瀬良(大地)と阪神の西(勇輝)がホームランを放ちましたが、森下も十分期待できる。投げてよし、打ってよし、顔もよし。言うことなしです!(笑)
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