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千賀滉大を変えた魔法の言葉。
「快速ノーコン」は球界のエースになった (5ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Hanjo Ryoji

 このひと言が千賀を覚醒させた。世界に通用する威力のあるボールが、低めにもグンと伸びるようになったのである。

 ちなみに、キャッチボールの相手をしてくれたのは吉見だった。まだ寒い1月、千賀のボールを受けた左手は激痛に見舞われ、吉見は何度も顔をゆがめていた。

「あいつ、いい根性してますよ」

 吉見はそう苦笑いを浮かべたが、そのキャッチボールのように遠慮なく懐に飛び込んできて、どんな小さなことでも吸収しようとする千賀の姿勢を喜んだ。そして自主トレ先を離れる際、吉見は千賀に愛用のスパイクをプレゼントした。そのスパイクは今でも千賀の実家に大切に置かれている。

 鴻江氏のひと言で投げる基礎ができあがった千賀は、そこから驚くほどの速さで成長を遂げていった。

 その後も毎年、千賀は「自分の原点はここにある」と鴻江氏の指導を仰ぎ、1年のスタートを切っている。今年はソフトボールの上野のほか、巨人の菅野智之も参加したことで日本一豪華な自主トレが実現した。

 千賀は今年で節目となるプロ10年目を迎えた。これまで数々の実績を残してきたが、安定を求めるつもりはない。そして5月には、思わずハッとするような大胆発言をしている。

「今までのものをすべて捨てて、新しいことをやっています。今までが"千賀A"ならば、今回は"千賀B"というくらい違うものです」

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