千賀滉大を変えた魔法の言葉。「快速ノーコン」は球界のエースになった (4ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Hanjo Ryoji

 かくして迎えた2012年1月、合宿に行った千賀は仰天した。そこにいたのは吉見だけではなかった。中日からのちにメジャーへ行くチェン・ウェイン、まだブレイクする前の大野雄大(中日)や安部友裕(広島)もいて、女子ソフトボール界のレジェンドである上野由岐子の姿もあった。

 これほどのメンバーが顔を揃えた合宿で、しかも今から8年も前のことだ。しかし、鴻江氏は千賀のキャッチボールを見た時の第一印象を、今もはっきりと覚えていた。

「当時はセットポジションではなく、振りかぶって投げていました。3球ほど見ただけで惹きつけられました。育成選手だけど、世界に通用すると。そのことは千賀本人にも伝えました。

 しかし、どれだけすばらしい球でも操れることが大切です。千賀も最初は力任せだけの、いわゆる"快速ノーコン"でした。そして高めの球はものすごい威力があるのに、低めは伸びずに垂れていたのも気になりました」

 それを改善するためのポイントは、左足の外側を捕手に見せることだと考えた。制球力向上のためには"ライン"をつくること。捕手のミットにめがけて1本の糸をイメージして、その軌道上にボールを通す。そして鴻江氏はこうアドバイスを送った。

「投げにいく時に左足の外側(スパイクのブランドマーク)を捕手に見せる。そこに自分の目があると思って、その部分で捕手のミットを見るつもりで投げてごらん」

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