元ロッテ渡辺俊介が語る「野球と暴力」。
鉄拳に頼らないベストな指導とは
野球界ではかつて、多くの選手がどこかで暴力の洗礼を受けてきた。それに耐えた者だけが、次のステージに上がることができると考えられてきた。残念ながら、令和になっても、その空気は残っている。
暴力的な指導、上級生から苛烈ないじめを受けても、選手たちは野球を続けるために耐え忍ぶ......高校、大学、社会人野球などで厳しい戦いをくぐり抜けたプロ野球選手は、野球界に残る暴力をどう考えているのだろうか? 現在、日本製鉄かずさマジック監督を務める渡辺俊介に聞いた。
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千葉ロッテマリーンズで通算 87 勝を挙げ、日本代表としてオリンピックやWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも活躍した渡辺俊介も、暴力の洗礼を受けたひとりだ。1976年8月生まれの渡辺は、國學院栃木(栃木)から國學院大學、社会人野球の新日本製鐵君津を経てプロ野球選手になった。その渡辺が書籍『野球と暴力 殴らないで強豪校になるために』(元永知宏・著/イースト・プレス刊)のなかで率直に語っている。
長らくロッテで活躍し、現在は日本製鉄かずさマジックの監督を務める渡辺「野球指導の場で暴力がダメだというのは、いまに始まったわけではない。昔からそうだったはずです。でも、厳しい環境で耐えた人間を社会が求めたという部分はあったでしょう。『愛のムチ』に対して理解もあった。だから、しつけとしての暴力、教育としての暴力が容認されたんじゃないでしょうか」
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