元ロッテ渡辺俊介が語る「野球と暴力」。鉄拳に頼らないベストな指導とは (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 高校時代に父親が野球部のコーチをつとめていたこともあって、渡辺は厳しく鍛えられた。昔気質(むかしかたぎ)の父親は、ほかのチームメイト以上に息子に厳しく当たった。

「期待する選手に特に厳しくする。当時は、そこに愛があればいいと考えられていましたよね。うちの父親もムチャクチャ厳しくて......よく殴られましたが、当時の指導方法としては間違っていなかったと思います。確かに愛情を感じていましたし。ただ、受ける側がそう感じられなければ、やっぱり暴力なんですよね」

 渡辺は高校時代、小関竜也(元・西武ライオンズなど)の控え投手だった。大学でもエースではなかった。

「大学2年の春から、東北高校や仙台育英(ともに宮城)の監督だった竹田利秋さんの指導を受けました。『竹田さんは厳しい』という噂を聞いた部員のなかにはやめようとした人もいて、部内がざわつきました。でも実際は、ほとんど殴られることはありませんでした。基本的には、言葉での指導でした」

 竹田は東北、仙台育英を率いて甲子園で通算 30 勝を挙げた名将。教え子には、佐々木主浩(元・シアトル・マリナーズなど)、斎藤隆(元・ロサンゼルス・ドジャースなど)、大越基(元・福岡ダイエーホークスなど)らがいる。

 この30年で、選手たちの気質は明らかに変わった。額に剃り込みを入れたり、眉毛を剃り上げたりする球児はもういない。

「昔はテレビドラマの『スクール☆ウォーズ』のような世界もあったでしょう。野球界だけでなく、ラグビーでも相撲でも。悪いことをしたらダメだということを、体で覚え込ませる必要があったのかもしれません」

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