元ロッテ渡辺俊介が語る「野球と暴力」。鉄拳に頼らないベストな指導とは (3ページ目)
暴力を含む厳しい指導には、メリットもないわけではない。
「僕の場合、よかったところを挙げるとすれば、暴力に対して耐性がついたこと。以前は、野球を続けるうちに暴力的な指導者に当たる可能性が高かった。免疫がついていましたから、そういう方に対しても臆さず、正面から渡り合えた。それは、父から厳しくされたおかげだったと思います。大学時代の竹田監督も、社会人時代の應武篤良監督も、厳しい指導者でしたから」
では、デメリットは何か? 渡辺は"メリット"と表裏一体となる事柄を挙げた。
「殴られるという恐怖を感じたことですね。父の場合、『これをやれ!』と言う人ではありませんでした。面と向かって考えさせられる時間が長くて、反射的に『はい』と答えると『はい、しか言えないのか』と怒られる。殴られる恐怖を感じながら指導者と向かい合う時間は、実際以上に長く感じました。特に礼儀やあいさつに関しては厳しかった。あのやり方はいま、絶対に通用しないですね」
もし暴力的な指導が有効なのであれば、例えば、陸上競技100メートルを走る選手をスタート前に叩けばいい。指導者が選手を怒鳴りつけてタイムを縮めることが可能なら、みんなそうするはずだ。競泳でも同じことが言える。当たり前だが、指導者がビンタをして気合を入れても、恐ろしい言葉で叱りつけても、いつもより速く走れるはずも泳げるはずもない。
だが、野球のグラウンドでは罵声が飛び、ミスをした選手を張り倒す監督やコーチがいる。それはなぜなのか。暴力的な指導が入り込むのは、野球という競技の特性が影響しているのではないかと渡辺は言う。
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