元ロッテ渡辺俊介が語る「野球と暴力」。鉄拳に頼らないベストな指導とは (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 暴力的な指導は許されない。ならば、どうすればいいのか?

「指導者が勉強するしかない。自分の経験だけでは選手の指導ができないのなら、なおのことです。僕には平岩時雄さんというトレーニングやコーチングの師匠がいます。陸上競技の110メートルハードルの日本記録を持っていた方です。僕は大学時代、教わったことができないタイプだったので、平岩さんにお願いして、どうすれば思い通りに体を動かせるかを教わりました」

 その平岩が、渡辺には誰よりも怖かったと言う。

「平岩さんの練習はものすごく厳しくて、手が抜けないんですよ。殴られたことも怒鳴られたことも一度もありません。それでも、怖いコーチなんです。『このへんでサボりたいな』と思った瞬間、すぐに気づかれる。何かを言われるわけではないけど、甘えた気持ちがバレたことがわかる。すべて見抜かれているという怖さがありました。平岩さんとトレーニングをして、殴らなくても、怒鳴らなくても、厳しい指導ができるということを知りました」

 日本の野球界には、指導者のためのライセンスがない。

「だから、どのコーチも、自分で学んできたことを選手に教えています。何が評価されるかと言えば、結局はチームや選手の成績ということになってしまうんですね。そういう評価の方法では、コーチはなかなか育ちにくいのではないでしょうか」

 渡辺には、プロやオリンピックでの経験がある。アメリカ、ベネズエラで学んだことも多い。それらをベースに、最新の野球理論やトレーニング方法をミックスしながら、指導を行なっている。

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