2020.02.21

やらかしても前を向く。DeNA倉本寿彦は
ファン350人と握手した

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu

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 2018年5月29日、東北楽天との交流戦──。

 横浜DeNAベイスターズの倉本寿彦は、茂木栄五郎の平凡なセカンドゴロを「感覚の違い」で内野安打にしてしまい、2日後に二軍落ちとなった。このプレーをきっかけに、ネット上では倉本を"叩く"風潮がますます顕著なものとなってしまう。そんな痛恨のミスの後でも、倉本は淡々と前を向き続けた。

「プロとしては、やってしまったことは受け入れるしかない。マイナスな気持ちにもなりますけど、絶対に言い訳したり、悪い感情を持ったりしない。言葉が物事を動かすこともありますからね。ミスをして批判をされても、受け入れて、反省して、前を向く。

 ひとりじゃ厳しい時も、僕は周りの人に本当に助けられています。過去に同じようなミスをしたチームメイトに声をかけてもらえたこともそうですし、球場に行けば、僕に『がんばれ』と声をかけてくれる人たちがいたことも、前を向く力になりました」

地元に近い平塚球場で原点に返った倉本
* * *

 もう後がないと臨んだ19年シーズン。倉本は開幕一軍メンバーに選ばれたものの、なかなか結果が出せず、ベンチを温める日々が続いていた。やがてチームが上昇気流に乗り出した6月5日に登録を抹消されると、しばらくは一軍から声がかからなくなった。

 夏の日。横須賀の練習場へ行くと、倉本はいつもと同じように最後まで黙々とバットを振り続けていた。練習が終われば陽が西に傾くなか、最後の1人までファンにサインをし続ける。

「僕がファンの立場だったら、サインしてくれたら嬉しいじゃないですか」

 プロに入ってからの5年間、ずっとその姿勢は崩していない。