「なんであんなに叩かれてるの?」と
心配されるDeNA倉本寿彦の苦闘

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu

「準備は整いました。あとは結果を残すだけです。今年は目標とか数字とかはありません。ただ試合に出たい。そのためなら、なんでもやるつもりです」

 2020年、平塚球場での自主トレ最終日。倉本寿彦はそんな言葉を残して沖縄キャンプへと飛び立った。いつも通りの、淡々としながらも強い思いを秘めた倉本の物言いは、戦う姿勢に入っていることの証(あかし)だった。

倉本の今季は平塚球場での自主トレから始まった倉本の今季は平塚球場での自主トレから始まった
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「もう後はないと思っています」

 倉本からそんな言葉を聞いたのは初めてだった。1年前のちょうど今頃のことだ。
 
 フルイニング出場から一転、大和の加入でセカンドへコンバートされ、大幅に出場機会を減らした2018年のシーズンを考えれば、息が詰まりそうになる言葉の重みを感じた。だが言葉を発した当の本人から、悲壮感や決死の覚悟といったものは感じられない。いつも通りの、淡々とした倉本のまま。ただ、言葉だけが異様な迫力を持っていた。

「具体的に数字がどうこうというものではなくて、"試合に出られなかった"ということがすべてです。試合に出られない間に、自分に足りないものは何なのかをずっと考えていました。単純に技術が足りなかったこともあるだろうし、気持ちの面でも、野球に対しても、どこかに甘さがあったのかもしれない。

 今の僕に求められているのは"ヒットを打つこと"です。1年目の途中からヒットが出るようになって『このままいけば試合にずっと出られるのかな』と思っていましたが、18年は完全に崩れてしまいましたからね。これは変わらないといけないな、と感じました」

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