2020.02.20

佐々木朗希は待つ喜びを教えてくれる。
逸材は実戦登板へスロー調整

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 すべての人間にとって贅沢な時間だった。

 北谷公園野球場に隣接するブルペンはマウンドが8カ所も設置されており、8人もの投手が同時に投球練習できる。その広々とした空間を、中央部のブルペンに立ったひとりのルーキーが独り占めしていた。

 捕手の後方ネット裏にはロッテの井口資仁監督をはじめ、評論家がズラリと並ぶ。その端では中日の選手たちまで興味津々の面持ちで座っていた。ブルペンの両サイドに設置された観覧席には、鈴なりの報道陣約100名が囲う。

キャンプインしてからもスロー調整が続くロッテ・佐々木朗希 ともすると、「大事なルーキーを見世物にして」と批判を浴びてもおかしくない状況でもあった。だが佐々木朗希は、そんな小市民的な心配を吹き飛ばすような大きな存在だった。

 ブルペン捕手の小池翔大を立たせて24球。リズムをつけて左足を高々と上げ、捕手に向かって体重移動して右腕を上から叩きつける。おそらく力加減としては8割程度だろう。それでも、爆発力のあるリリースから、小池のミットを粉砕するような剛球を投げつける。ブルペンは小池の捕球音以外、ただただ静謐(せいひつ)な時間が流れていた。

「前よりもしっかりと、納得のいく球が増えたと思います。全体的にまとまっていました」

 ブルペン投球を終えた佐々木は、そう総括した。