平石洋介の葛藤。愛する楽天と東北を去ることになっても貫いた信念 (4ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 ひと言、ひと言、噛みしめるように答え、囲み取材を終える。ふと、自分の未来のことが平石の脳裏をよぎった。

「もしかしたら、今日でこのユニフォームを着るのが最後かもしれないな」

 例年、首脳陣はシーズンの全日程が終了した時点で、球団と翌年の契約について話し合いの場が設けられる。平石が球団から要請されたポジションは、「二軍統括」という新設の役職だった。

 もともと、どのような内容だったとしても一度保留し、熟考してから回答しようと決めていた。しかし、二軍統括という仕事が重要であることを理解はできるものの、自分がその任に就くことの意味を、「その場でも、話を持ち帰ったあとも見出せなかった」と、平石は偽らざる想いを、言葉を選びながら口にした。

 球団からのオファーと自分の今後を、頭をクリアにして考える。自分が納得しないままこの仕事を引き受けたら、楽天という居場所にしがみつくことになるんじゃないか? そう自問自答して、平石の信念がふつふつと沸き立つ。

 現役を引退した2012年、コーチとして新たな野球人生をスタートさせた時の、言うなれば金科玉条が再び心に突き刺さった。

「コーチになる時に、『今の場所にしがみつくような人間にだけは絶対になりたくない。自分の立場を守るような指導者だけにはならない!』って思って。指導者として、僕はたいしたことはできないかもしれないですけど、自分の保身を優先して選手やスタッフと向き合うことだけは絶対に嫌なんです」

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