平石洋介の葛藤。愛する楽天と東北を
去ることになっても貫いた信念 (3ページ目)
監督退任の報道以降、連日のように関連の報道をされるなか、平石は戦いに集中していた。「毎日が重要な試合」を体現していたのである。
「その日のベストな布陣は?」と熟考し、決断する。CS進出を決めた9月24日のソフトバンク戦で逆転本塁打を放ったゼラス・ウィーラーのように、不振に喘いでいたとしても、ベンチでの立ち居振る舞い、勝利への意欲を前面に出して戦う男たちを、平石は信じ、グラウンドへ送り出した。
「あの時はとにかく、目の前の試合で勝つためにどうするか? 何とかこのチームで日本一になりたい......それしかなかったです。だから、周りからどんな声が聞こえてこようが、別に自分の何かが変わるようなことはなかったですね」
虚心坦懐の平石が現実を受け入れ始めたのは、CSのファーストステージでソフトバンクに敗れた直後である。
選手たちにシーズンの労をねぎらう言葉をかけ、報道陣の囲み取材に対応した平石の表情は穏やかだった。彼自身は「本当に悔しかった」と、あの場での感情を表現したが、丁寧に記者の質問に応じていた。球団広報が「そろそろよろしいでしょうか?」と締めなければ、いつまでも取材が続くような雰囲気すらあった。
紡いだ言葉。それは、成長したチームを称える、親心のようだった。
「シーズンが始まる前から『戦う集団になろう!』と言ってきましたけど、口で言うのは簡単なんです。試合に出ている選手はもちろん、ベンチメンバーも含めてそういう気持ちにならないと、本当の意味での戦う集団にはならないわけで。今年(2019年)は苦しい時期もありましたけど、とくに終盤はひと回りもふた回りも成長してくれて、CSでもその気持ちを出して戦ってくれました」
3 / 7