平石洋介の葛藤。愛する楽天と東北を去ることになっても貫いた信念 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 平石には、指導者となってから選手たちに言い続けてきた言葉がある。

「腹をくくれ」
「勇気を持って戦え」

 連勝や連敗の最中や上位を賭けたカードなど、報道陣から「明日は大事な試合となります」と質問されれば、いつだって「明日じゃないです。いつも大事な試合です」と強調してきた。渡辺直人や藤田一也のベテランは、「平石監督は0−10で負けていても絶対に勝負を捨てない人」と、その隙のない姿勢に頭の下がる思いだったという。

 平石は選手に伝えている言葉を、いつだって自身で示していた。だから、いかなる評価も受け入れ、勇気をもって前に進むことができたのだ。

 あの日からの騒動もそうだ。平石は動じず、冷静に振る舞った。

 9月18日、スポーツ紙の一面に平石の監督退任が報じられた。この時、3位と1ゲーム差の4位。CSが射程圏内にあるなかでのニュースに、周囲は騒然となった。

 記事では、平石が最年少監督でありながら若手の積極起用や細かい戦術で上位争いに参戦しているなど、指揮官としての能力を評価していた。一方で、監督退任の理由については、1年契約だったことや石井一久GMとのコミュニケーション不足、リーグ優勝が完全消滅したことが言及されていた。

 その内容に関して、平石は今も否定はしない。それどころか、客観視するように球団と監督の立ち位置を述べる。

「監督として長い目でチームをつくっていこうとは思っていましたけど、球団側の考えもあるのは当然のことなので。逆に、球団にビジョンや考えがないようじゃアカンと思うので、そこは『しっかりと話し合いながら、チームをいい方向に導いていこう』とは思っていました。ただ、現場のトップとしての責任感は絶対に持って戦わないといけないし、時には選手を守らないといけない。いろんなことを考えながらやってきたつもりです」

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