検索

「バレンティンの穴」を埋めるか。
塩見泰隆は「二軍の帝王」脱却を狙う (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 昨年10月のフェニックスリーグでの塩見の打席を見て、あらためて今シーズンへの期待が膨らんだ。どんなカウントでもまったく動じず、自分の打てるボールを一発で仕留めていたからだ。

「打席でのいいバランスってあるんです。打ちたいという気持ちのなかで、自分の打てるボールでなければ見逃す。二軍ではできているのですが、一軍だと『打ちたい』という気持ちが先走って、ストライクが来たらなんでも振ってしまう。体も前に出てしまうし、自分本来のスイングができないので、自ずとヒットになる確率は下がりますよね。自分でも分析はだいたいできているんですよ」

 塩見はそう言って続ける。

「一軍では、頭のなかで整理はしているのですが、自分のなかに落とし込めていない。打てなかったら......という不安がどうしても勝ってしまう。シーズン終盤は少しうまくいったので、そういう気持ちで打席に立ちたいですし、乗り越えないと前には進めないですから。

 僕のいちばんの武器は足なのですが、そこを意識しすぎてバッティングが小さくならないように。長打もあって盗塁もできる積極性のある1番打者、もしくは上位やうしろの打者しっかりにつなぐ打者になりたいと思っています」

 宮出ヘッドコーチは、プロ3年目を迎えた塩見について「才能を開花させるというより、才能を発揮できる環境に導きたいと思っています」と言った。

「塩見が力を発揮すれば、うしろの打者にも恩恵があります。塁に出ればスピードで相手にプレッシャーをかけられるわけですから。二軍では打率も残しているし、長打力もある。そこを生かすも殺すも、本人のメンタルとこちらの環境づくりで、ある程度の我慢も必要だと考えています。チャンスは間違いなく増えると思いますが、特別扱いはできません。そこはチームとして総合的に判断していきたい」

"二軍の帝王"が一軍でもそのバッティングを実現できれば、ヤクルト打線は大きな武器を手に入れることになる。最下位からの逆襲を誓うヤクルトにとって、塩見は欠かせない戦力になるはずだ。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る