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榎田大樹に理想的な球速差の球種。
その投球術にプロの醍醐味がある (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 榎田はあえて毎回、不安を抱いてマウンドに登るだけでなく、球種についても深い考えを持って投球している。たとえば「スラーブ」と考えることにも秘訣がある。軌道的にはカーブだが、カーブと考えると腕の振りが緩みがちなので、スラーブと定義することで鋭く振っている。

 以上が、榎田の超絶投球術だ。

 社会人から2010年ドラフト1位で阪神に指名された左腕は、これほどピッチングを突き詰めている。菊池雄星のように剛球を投げるのも一流投手の魅力だが、140kmのストレートで打ち取る榎田の投球術にも同じくらいプロの醍醐味がある。

「強いて言うなら、それをやらなければ僕は生きていけないので。今のボールがよかったから、もっとさらに(球速やキレを)ではなくて、今のボールが一番いいと思って、そのなかで打ち取れるように。

 そういう意味では、ファンの人も僕に求めすぎないようにしてほしいです(笑)。本当は10勝10敗くらいのピッチャーが、去年は11勝4敗をたまたましたと。気負わないようにするには、それくらいの気持ちがいいのかなと思っています」

 西武で伸び悩む投手たちは、常に100点満点を求めているようにも見える。しかし、プロで結果を残すには、60点の状態の時にいかに打ち取るか、という考え方も重要だ。

 ストレートの球速が時に140kmに満たない榎田は、なぜ勝てるのか――。ファンはあまり求めすぎず、西武の若手投手たちはその投球術に刮目してほしい。

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