2019.05.09

榎田大樹に理想的な球速差の球種。
その投球術にプロの醍醐味がある

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 リーグ連覇を狙う西武が、12球団ワーストの防御率4.64と「投壊状態」にある(5月7日時点)。

 前年かぎりで菊池雄星がシアトル・マリナーズに移籍した穴を補強せず、ある程度の苦戦は予想された。ただし、髙橋光成や相内誠、佐野泰雄らドラフト上位で獲得した投手が思うように育っていないことが、問題の根底にある。

昨年11勝をマークして西武先発陣に欠かせぬ存在となった榎田大樹 そんなチームで”救世主”のように期待されたのが、32歳の榎田大樹だ。

 昨季は開幕2週間前に阪神からトレードで加入すると、チーム3位の11勝をマーク。ところが、今季は左肩の張りで開幕に間に合わず、5月2日の日本ハム戦でようやく初登板を迎えた。

「基本的に、投げる時には不安しかないです。人間、最初はいかに感覚を掴むかが難しいので、立ち上がりは不安でしかないですが、そこをうまくやれたら感覚も変わるでしょうけど。まあ、不安しかないです(苦笑)」

 今季初先発の前日、記者に囲まれた榎田は率直な胸のうちを明かした。実はこの心構えこそ、ベテラン左腕にとって自己コントロール術でもある。

「逆に不安を持ってないと、僕はダメだと思うので。不安という表現は違うかもしれないですけど、緊張と言うか……」

 そう語った翌日、8回を投げて被安打3、1失点で今季初勝利を飾った。それまで二軍で3試合に投げて防御率4.22と打ち込まれていたなか、なぜ1軍で抑えられたのか。

 その裏には、「超絶」とつけても過言ではない投球術がある。

 土台となるのが、投球フォームにおけるメカニックだ。

「ファーム(二軍)では下半身が開くのを我慢しすぎることで、逆に上が開いていました。同じ左の小石(博孝)と話して、『右足をスクエアに出すことで骨盤が開いてくれれば、上半身の開きを我慢できていい感じで(リリース時に)前に入っていけるんじゃないか』となり、それをうまく再現できました」

 昨年Sportivaで紹介(『移籍1年目で初のふたケタ勝利。榎田大樹はなぜ西武で開花したのか』)したように、榎田はでんでん太鼓のイメージで投げている。地面から反発力を得て、投球動作のなかで腕が「振られる」ことでボールが走ってくれる、という論理だ。ピッチングとは、いわば物理学の実践であり、こうしたメカニックを作り上げることが好パフォーマンスを再現するには不可欠になる。