大瀬良大地、成績向上の秘密。「土踏まずで腕を振る感覚」を得た (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

―― 高い素材を生かしきれていなかった、ということでしょうか。

「腕の筋力の発揮の仕方は、まるで"シャチの尾びれ"と表現したくなるほど、強くてしなやか。バチンと海面を叩くように、すばらしい感覚を持っていました。腕だけは超一流。黒田さんより上かもしれません」

―― 下半身からの連動性が高まると、その力はより発揮される?

「ボクサーの小国選手も、初めから全身を思いどおりに動かせたわけではありませんでした。彼とは、もう年齢的にも"旬"を過ぎたのでは......と言われ始めてからの出会いでしたが、その1年半後に世界チャンピオンになったんです。そしてその京都で、また一から始める大瀬良さんと出会ったんです」

 そして大瀬良は、手塚氏に師事するようになった。関東遠征時は都内の工房に通い、体の使い方を学んだ。2017年は計8回通い、10勝をマーク。ただ、手塚氏は「身体操作が確立したとは言える状態ではなく、まだまだ迷いながら、悩みながら、打線に助けられた10勝」だと感じていた。黒田氏から続く広島の選手との深い縁もあって、大瀬良への全力サポートを決意。2017年12月、広島市内に工房を設立。第1号の客は、もちろん大瀬良だった。

―― なぜ広島に工房をつくられたのですか。

「大瀬良さんのためにつくった工房と言ってもいいくらいです(笑)。ただ、我々はコーチではないし、トレーナーでもなければ、インストラクターでもありません。あくまでパフォーマンスコーディネーターなんです。広島球団のご理解もあって、選手の調律、調整に携わらせていただいているという立ち位置です」

―― 大瀬良投手はどのように変わっていったのですか。

「体のなかにバイパスを通す工事のようなものです。週2回のペースで工房に通っていただきながら、神経ネットワークをひとつひとつつくっていく。カラダの操り方がわかれば、身のこなしも明らかに変わります。身のこなしが変われば、当然、球も変わってきます」

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