斎藤佑樹が30歳で原点回帰。「楽しむ自分を見てはしゃいでほしい」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史、スポルティーバ●写真 photo by Taguchi Yukihito,Sportiva

── 自分にフォーカス?

斎藤 自分がどうだから大変だ、ということじゃなくて、一度、立ち止まって冷静に周りを見られたら、もっと違う景色だったのかなと思います。たとえば、すごくたくさんの人が目の前にバーッといて、まるで花道を通るようにそこを抜けていくんですけど、僕、ものすごく早足で歩いていたんです。それこそ、まるで逃げるように......そうではなくて、周りを見ながら、もう少しゆっくり歩いていたら、まったく違う景色が見られたのかもしれません。

── 早足で......確かにそうでしたね。

斎藤 あの異常な空間から逃げたいという気持ちがあったからなんでしょうね。でも、今となっては、周りを見ることができたらもっとよかったのに、と思うんです。全員は無理かもしれませんが、来てくれていたファンひとりひとりの顔とか、マスコミの人たちの顔とか......。

── それは今の吉田輝星投手を見ていて、重なるところは感じますか。

斎藤 そうですね......たとえばこの前、テレビで映像を見たんですけど、彼もやっぱり早足で歩いているんですよ。ああ、もっとゆっくりでいいのに(笑)と思いながら、見ていました。もっとゆっくり歩いて、周りを見渡したほうが後々、生きるのになって......今はそうせざるを得ない気持ちもよくわかるんですけどね。

── 斎藤投手も吉田輝星投手も甲子園が野球人生のターニングポイントになりました。斎藤投手の場合、甲子園で勝つまでの18年と、甲子園で勝ってからの12年、自分の中でもっとも変わったと思うのはどんなことですか。

斎藤 生まれてからの18年、僕は失敗を失敗と思っていませんでした。失敗も成功するためのひとつのジャンプ台だと思っていましたし、失敗を気にしなかった。深く考えなかったんです。だから、失敗を覚えていないんでしょうね。でも、その後の12年はいろんなことを失敗と感じるようになった。おそらく甲子園の優勝があったから、目標に届かないものは全部が失敗だと思うようになったのかもしれません。いちいち、なぜ失敗したんだろうと考えていました。でも、それはネガティブな意味じゃありません。失敗をちゃんと解釈しようと思えるようになった、ということです。今は失敗をひとつひとつ解釈して、前に進もうと思っています。

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