斎藤佑樹が30歳で原点回帰。「楽しむ自分を見てはしゃいでほしい」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史、スポルティーバ●写真 photo by Taguchi Yukihito,Sportiva

 今年でプロ9年目を迎えた北海道日本ファイターズの斎藤佑樹。気がつけば、金子弌大(ちひろ)、宮西尚生、村田透に次ぎ、ファイターズ投手陣のなかで4番目の年長者となった。昨年は2年ぶりのシーズン0勝に終わり、「今年こそ」の思いは誰よりも強い。そんななか、2月11日(米国時間)にキャンプ地・アリゾナで行なわれた韓国・NCとの練習試合で先発し、2回を無安打無失点に抑える好投を見せた。30歳になった今、斎藤佑樹はどう野球と向き合い、何を目指しているのだろうか。

韓国・NCとの練習試合で好投し、順調なスタートを切った斎藤佑樹韓国・NCとの練習試合で好投し、順調なスタートを切った斎藤佑樹── 今年でプロ9年目、去年のシーズン中には30歳になりました。歳を重ねて、大台に届いてみて、自分のなかでの変化を感じたことはありますか。

斎藤 自分のなかというよりも、周りからの評価のされ方に違いは感じます。30歳だからこうしたほうがいい、30歳だからどうあるべきだ、みたいな......ただ今の僕は、20代の初めの頃にイメージしていた30歳の自分に追いついて、追い抜いたような感じを持っています。同じ世代の友だちからは「30歳ってもっと大人だと思っていた」というような話をよく聞くんですけど、僕はこの2年くらいで自分が想像していた30歳のイメージを、ちょっとだけ追い抜いた......ような気がしているんです。

── それはなぜ、そう思えるんでしょう。

斎藤 ようやくいろんなものがハッキリ見えてきたのかもしれません。自分が野球をやっている意味とか、自分がなぜ野球をやってきたのか、なぜこんなに野球が好きなのか......以前はそういうことの答えにこだわりが強かったんです。要は、カッコつけていたんでしょうね。でも最近、そういうのってめんどくさいなって(笑)。

── めんどくさい?(笑)

斎藤 たとえば自分が野球をやっている意味を考えたとき、前は「周りの人のために」なんてザックリと思っていました。でも、それって結局、僕が楽しいからなんですよね。じゃあ、僕が楽しいと感じることって何なのか......それは僕が野球をやると喜んでくれる人がいて、そういう人の笑顔とか喜ぶ姿を見ることでした。

 子どもの頃、野球を始めたときの感情と一緒なんです。モテたいとか、褒められたいとか、カッコいい自分を見てはしゃいでもらいたいとか、そういう想いが楽しさの原点だったはずです。だから今、30歳になってようやく、プロ野球選手として応援してくれている人たちに喜んでもらうために何をしなくちゃいけないのか、やるべきことは何なのか、そういうことを考えるようになりました。

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