2018.12.11

大家友和が力説。「資格を持った
人間にしか投げられない」魔球がある

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by ©Yokohama DeNA Baystars

“魔球”ナックルボールについて尋ねたときのことだ。

「いずれなくなる運命にあるものだと思います」

 その声の主は、迷いなく言い切った。

 ナックルはボールの回転数が極端に少ないために空気抵抗を受けやすく、そのため不規則に変化する。それは投げた本人ですら「どこに行くのかわからない」と言うほどだ。まさに”魔球”であるが、それを使いこなせる投手は稀である。

ナックルボーラーになるには強い覚悟が必要だと語る大家コーチ(写真右) MLBでは200勝を達成したティム・ウェイクフィールが代表的な存在だが、現在においては2012年にサイヤング賞を獲得したR・A・ディッキーやボストン・レッドソックスのスティーブン・ライトぐらいしか目立った使い手はいない。

 日本球界もしかり。かつてロッテや巨人に所属した前田幸長は、ナックルの握りを活用したスライダーなどで活躍したものの、ナックルそのものを代名詞とするような日本人選手は出現していないというのが実情だ。

 現役では、横浜DeNAベイスターズのクローザー・山﨑康晃がナックルを投げることができる。しかしプロになってからは、ルーキーイヤーの2015年のオープン戦、またオールスター戦といった舞台でしか投げていない。

 そんな山﨑になぜナックルを投げるのを止めたのか尋ねてみた。

「ほかの球種とは異なり、ボールに指をかけない特殊な握り方なので、指先の感覚が変わってしまうんです。ほかのボールにも影響が出てしまい、これは使えないなという判断になりました」

 シビアなプロの世界。捨てなければいけないものも当然ある。山﨑は帝京高校入学時からナックルを使い始め、亜細亜大学でも活用していたが、そもそもどうして魔球に手を出そうと思ったのだろうか。

「ライバルに差をつけるために、何か特化したものをつくらないといけないと思って取り組んだボールなんです。じつは中学から高校に上がり軟式から硬式になったとき、変化球が投げられなくなって、たまたま最初に投げられるようになったのがナックルだったんです」