スポ根漫画みたいなヤクルト秋季キャンプ。
しごきの中にも遊び心あり
午前9時、ヤクルトの秋季キャンプ(愛媛県松山市)は、コンディショニングから始まり、キャッチボール、守備練習、走塁練習と続き、ランチが終われば一気に練習密度が濃くなっていく。
野手陣は2時間のバッティング練習のあと、"特打"もしくは"特守"を1時間。さらにその後、16人の選手が2組に分かれて約1時間の"夜間練習"と"ウエイト"が待っている。練習が終わるのは午後6時過ぎ。坊ちゃんスタジアムには、今年も"スポ根漫画"のような風景が広がっていた。
「見ている方は楽しいと思いますが、やっている人間にとっては地獄です」(山崎晃大朗)
5キロの鉛入りベストを着ながらのスイング練習で苦悶の表情を見せる上田剛史 球場にメトロノームの音が聞こえてくれば、午後の練習の始まりの合図で、選手たちは一塁側、三塁側のフェンス前に整列。「チックチックチック、チーン」のリズムに合わせ、バットを振りながら外野へ向かって行進を始める。
この光景を眺めていた小川淳司監督は「チーンって、お経みたいで面白いですよね。これも石井琢朗(打撃コーチ)が考えたんです」と笑顔を見せた。
この"スイング&ランニング"のあとに"BT(打撃練習)"が始まる。フリー打撃のほかに、約5キロの鉛入りのベストを着用してのソフトボール連続ティー、ゴムチューブに引っ張られながらやるティーバッティングなど、用意されたメニューは20種類。16人の選手がそれぞれ班に分かれてローテーションを組んで回り、1メニューが6分。トータル120分の過酷なメニューである。
この多彩なメニューを考案しているのが石井コーチである。
「厳しいメニューを、歯を食いしばってやるよりも、楽しさがあった方が(バットを)振ってくれますからね。すべてをきつくすれば選手が萎えてしまうので、遊び感覚も入れています。去年は僕も(ヤクルト)1年目で、選手たちのこともわからなかった。今年は精神的にたくましくなっているし、僕自身も覚悟を持ってやっています。振る力はついてきているので、そこに技術がついてくるか......です」
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