投手コーチ・吉井理人の指導の軸は「チームの勝利よりも選手の幸せ」 (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 まして、翌日の第3戦も2点ビハインドで9回に登板すると、タイムリーで1点を失った。セーブシチュエーションでの失敗ではないが、いきなり痛い目に遭った抑え候補に、コーチとしてどう向き合ったのだろうか。

「もちろん、石川本人と話し合いをしました。コーチとしてはまず、選手がその時にどういうことを感じていたか、ちゃんと選手自身で意識してもらいたいんですね。コーチの僕から指摘するのは簡単なんですけど、それだとうわべの反省だけで終わってしまうんで、まずはあの時点でどう思っていたのか、しつこいぐらいに選手に質問していきます。そこから本人との話し合いが始まって、そのなかで気づかせていくのがコーチの仕事かな、と思っています」

 果たして、石川は次カード、4月3日の楽天戦でプロ初セーブを挙げている。すぐに挽回ができたのも、話し合いによる効果があったからなのだろうか。

「効果もあったと思いますが、もともと、石川は切り替えがうまい子なんです。打たれてすぐはがっかりしてましたけど、次の日からもう普通に戻ってましたね。そのへんは、性格的には悪く言うと鈍感(笑)。ただ、切り替えがうまいから、早いからと言って放っておくと、本当に鈍感でなにも感じないで、『まぁいいや』ってなっちゃう。そうして次に切り替えられちゃうと、同じ失敗をする。石川の場合、その危険性がなくなったわけではないので、切り替えられるにしても、ちゃんと教訓を残して切り替えてもらいたいなと」

 4月末から中継ぎに配置転換された石川だったが、シーズン中盤に抑えに復帰。右内転筋の故障による離脱もありながら、18年は52試合に登板して19セーブと抑えとして結果を残した。

 一方、先発陣で大きく成長したのが上沢直之で、プロ7年目にして自身初の2ケタ勝利となる11勝をマーク。4完投で完封が3試合、うち1試合が無四球と安定感のある投球内容が光っていた。16年3月の右ヒジ手術から見事に復活を遂げた形だ。

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