2018.11.08

投手コーチ・吉井理人の指導の軸は
「チームの勝利よりも選手の幸せ」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

【連載】チームを変えるコーチの言葉〜吉井理人(1)

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 クライマックスシリーズ敗退が決まって、翌日の10月16日。投手コーチの吉井理人が日本ハムを退団することが発表された。

 吉井は現役引退直後の2008年から同球団の投手コーチに就任し、09年と12年のリーグ優勝に貢献して12年に退団。15年にはソフトバンクの投手コーチに就任し、日本一に輝くと、日本ハムに復帰した16年もチームは日本一になった。

今シーズン限りで日本ハムを退団し、来季からロッテの投手コーチとなる吉井理人 それだけの実績と経験があっても、球団の方針でコーチが入れ替わるのは野球界の常。来季からロッテの投手コーチとしてまた新たな道に進むことになった吉井自身、もう過去は過去と割り切っているのかもしれないが、2018年の日本ハム投手陣のことは聞かずにいられなかった。

 17年のシーズンオフ。ケガの影響で投手としては機能しなかったとはいえ、大谷翔平がMLBのロサンゼルス・エンゼルスに移籍。さらに抑えの増井浩俊がオリックスへ、主力捕手の大野奨太が中日へ、いずれもFAで移籍した。

 それ以前に谷元圭介も中日に移籍し、バッテリーに大きな穴が空いて、投手コーチの吉井の苦労は相当なものではないか、チームとしても上がり目はないのではないか、と外から見て考えていた。実際にはどうだったのか。吉井に尋ねた。

「ファイターズの場合は毎年、誰かしら抜けるので、とくに誰が抜けたからどうだって、コーチとしてはあまり考えなかったです。監督はたぶん頭を悩ましていたと思いますし、僕らもチームの勝利を目指してやっているんですが、コーチとしてのひとつの軸はまた別のところにある。その軸というのは、チームの勝利よりも選手の幸せを考えてやることです」

 パフォーマンスを上げることはもとより、1年間、投手の心と体のコンディションを良好に保ち、気分よくマウンドに上がってもらうこと。それが投手コーチとして最大の仕事だと考えている吉井にとって、チームの勝利は第一ではない。