2018.05.02

松坂大輔が勝った日。森監督と交わした
「昭和みたいな男たちの会話」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 松坂大輔には”天の邪鬼(あまのじゃく)”なところがある。

 トレーニングで長々と走らされるのは大嫌いでも、たとえばフリスビーを投げられればどこまでも走って捕りにいく。サッカーボールを蹴られれば、いつまでもボールを追いかけている。松坂は、誰かが見ているところで長距離走に取り組んで、わかりやすく一生懸命さをアピールするのが嫌いなのだ。

 本来、練習のための練習をしない松坂だが、人に見られていると、つい手を抜いた振りをしたくなる。やっている振りをしたくなるというならわかるが、松坂の場合、人目があるとやってない振りをしたくなる性分なのである。

日本球界で12年ぶりの勝利を挙げた松坂大輔(写真右)を称える森繁和監督 そんな天の邪鬼な松坂のことを、この指揮官はよくわかっている。松坂がドラゴンズで初勝利を挙げた4月30日の試合後、森繁和監督はこんな話をしていた。

「今日はねぇ、5回の時点で代えようと思っていたんですよ。球数も100球だったし、勝利投手の権利を持ったまま早めに代えてもいいのかなと思って、本人に声を掛けたら、『行きます』って……アイツの中には、先発ピッチャーというのは5回じゃなく6回、球数が120球ぐらいいくのが当たり前だという考えがあるんでしょう。

 まぁ、行くかと訊けばアイツは必ず行くと言うだろうし、だったらと思って、次、6回を投げ終えてベンチへ帰ってきたときに『もう1回行け』と言ったら、今度は『無理です』と(笑)。行くなと言えば行くというし、行けと言ったら逆言うし、そのへんはマツらしんだけど……」

 おもしろいなと思ったのは、森監督のその話が、松坂の話とは微妙に食い違っていたところだった。松坂はこう言っている。

「冗談っぽく『最後まで投げろ』と……僕が答えを返す前にはもう戻っちゃって、いなくなっていたので、ああ、これは交代だな、と。6回の僕が投げていたボールを見て、たぶん代えられるだろうなと思っていました。(もう無理です、とは)言ってないです」