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高校3年間ベンチ外からドラ3。
ヤクルト蔵本治孝「無名選手に夢を」 (3ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 選手権では2回戦の和歌山大戦に先発し、3回途中自責点3で降板し負け投手となったものの、学生野球の聖地・神宮球場のマウンドに立つことができた。

「春の後半はヒジの体力が持たなかったですが、ここまで状態が戻るとは思いませんでした」と、その右腕は自らも驚く回復を見せている

「1年間野球ができていなかったのに、いざ投げ始めたら全国大会で投げられて恵まれているなと思います」と夏場に話していた蔵本だが、秋は3勝0敗、防御率0.92と自らの力でチームを引っ張った。

 三宅博コーチ(元阪神内野手、コーチ、スコアラー)も今後の活躍に太鼓判を押す。

「角度のいいストレートを投げ、左打者のインコースも突ける投手は少ないですよ。まだまだ伸びしろもあって、球速もあと2、3キロは出るでしょう。プロではリリーフとして面白いですね」

 今の蔵本はリハビリに費やした1年間を蔵本は「最もいい時間でした」と振り返ることができる。そして、「中学、高校で目立つ選手ではなくても、人生は変えられると夢を与えられれば嬉しいです」と胸を張って話す。

 185センチ、95キロという格闘家さながらの体型ではあるが、話ぶりはとても柔らかく、周囲への気遣いもできる。また、大の甘党で「登板前は控えている」と笑うが、試合のい週には洋菓子店にひとりで行ってシュークリームやワッフルに舌鼓を打つ。そんなギャップも蔵本の魅力だ。

 与えられた背番号は、安定感抜群の抑えぶりと明るいキャラクターで人気を得た高津臣吾(現・二軍監督)の現役時代と同じ「22」。投げることさえままならないどん底から人生を変えた蔵本が、その活躍とキャラクターで神宮球場のファンを沸かせるときを期待せずにはいられない。

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