手術から1541日の空白。
それでも荒木大輔は、もう一度投げられた

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

シリーズ「もう一度投げたかった」──荒木大輔(後編)

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 投手の宿命ともいうべき、肩やひじの故障によって選手生命を絶たれたり、本来の力を失ったりした元エースたち──。

 ケガに至る過程やリハビリの苦闘を語ってもらう本シリーズのなかで、荒木大輔のケースはやや異色だ。1988年に行なったトミー・ジョン手術のあと、さらに2度の手術を経て4年もの歳月をかけながらも一軍のマウンドに復帰。それも、ただ登板したというだけではなく、レギュラーシーズンで勝ち星を重ね、日本シリーズでも好投してヤクルトスワローズの日本一に大きく貢献したのだ。

 その意味では、「もう一度投げたかった」ではなく、「もう一度投げられた」というべきかもしれない。長い手術とリハビリの日々を経験したことで、投手としてどのような変化があったのだろうか。

1993年の日本シリーズ第1戦、西武から勝利を挙げた荒木大輔1993年の日本シリーズ第1戦、西武から勝利を挙げた荒木大輔

──1992年6月14日、荒木さんはイースタンリーグの大洋戦で1988年以来の実戦登板を果たします。

「二軍戦で復帰登板したときには、村田兆治さんにも来ていただきました。そのときは、ピッチャーとしてマウンドに上がれることがうれしかったですね。二軍の試合ではありましたが、『ここが自分のいる場所だ』と思いました。最高の舞台でした」

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