2017.09.25

【イップスの深層】
給料0円でも、
一二三慎太が再び投手に挑むわけ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

連載第8回 イップスの深層~恐怖のイップスに抗い続けた男たち
証言者・一二三慎太(3)

(前回の記事はこちら)

石川ミリオンスターズの練習生としてリハビリの日々を送っている一二三慎太 ドラフト会議で指名された選手は、入団時にメディカルチェックを受けることが義務づけられている。2010年のドラフトで阪神から2位指名を受けた一二三慎太(ひふみ・しんた)は、その惨憺(さんたん)たる診断結果を見て、なかば「そうやろな」と納得してしまった。

「関節唇は破れているし、腱板も切れている。肩のどこが痛いというのではなくて、全部が痛かったですから。最初から『これはもう、リハビリやな』と言われていました」

 医師からは手術を勧められ、本人も手術したいという希望を伝えた。しかし、球団は難色を示した。一二三はまだ18歳と若い。肩にメスを入れれば、少なくとも1年以上は棒に振ってしまうことだろう。ならば、保存療法に取り組んではどうか。インナーマッスルや周辺の筋肉をトレーニングして補強する方法もある。球団として一二三の将来を考慮した上でのアドバイスだった。

 最終的に一二三は球団の方針に従うことになった。そして迎えたプロ1年目。1月の新人合同自主トレから、肩は絶不調だった。

「サイドでも放られへんわ、というくらい痛くて。とりあえず何とか乗り切って、キャンプに行って1回だけブルペンに入ったんですけど、もうアカンと。それからはずっとリハビリでした」

 それ以来、一二三は肩の強化と下半身のトレーニングに取り組むことになった。投手としてボールを握らない日々は不安が募りそうなものだが、一二三は「逆にそっちのほうがよかったです」と振り返る。

「むしろ忘れたれと思って。いったん、もうええわと」