【イップスの深層】給料0円でも、一二三慎太が再び投手に挑むわけ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

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 肩を壊し、指先感覚が崩れ、イップスになった。そんな過程を一度リセットしたかった。肩が治れば再び指先感覚も戻り、イップスも解消されるのではないか。そんな淡い期待もあった。しかし、トレーニングに明け暮れる毎日を過ごしながらも、相変わらず肩の痛みは消えず、1年はあっという間に過ぎ去っていった。

 ある秋の日。一二三は「ストレス解消のつもりで」室内練習場でバッティング練習をしていた。そのスイングを見たチーム関係者が「野手でいけるやん!」と驚き、野手転向を勧めてきた。一二三は悩んだ末、わずか1年で投手から野手に転向する。

「正直言って、1年間野球をしていなかったので、野球がしたかったんです。野手でやらせてもらえるんやったらええわと思って、親とも相談して野手でいこうと。肩の不安はずっと消えないですからね」

 高校時代に甲子園で打棒が爆発したように、もともと一二三の打撃は高く評価されていた。50メートル走では、手動のストップウオッチで「5秒6」という恐るべきタイムを叩き出した快足もある。だが、本人は野手として、とりたてて自信があったわけではなかったという。案の定、転向してすぐにつまずいた。

「打球が前に飛ばないんですよ。練習していないし、木(木製バット)やし、球は速いし......。これはヤバイなと(笑)。プロはレベルが全然違いましたね。特に変化球。キレが全然ちゃいます」

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