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高橋由伸監督に欠ける危機管理能力。
名コーチが目配りの必要性を諭す (4ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 たとえば、同じことを何度もさせると飽きてくる粘りのない性格の選手がいたとする。そういう選手は、調子がいいからといって一軍に上げても長続きしない。逆に「これをやっていろ」と命じたら、夕方まで黙々とバットを振り続けている愚直な選手は、ちょっとしたきっかけで一気に育つ。そうやって多くの選手と接してくれば、いざ監督という立場になっても、起用で迷わない。それこそが指導者の"引き出し"である。

 よく二軍の監督をやっていた人が一軍の監督に昇格したとき、自分が育てた選手を使いたがるのは、必ずしも愛情やかわいさだけではない。監督として、その選手の技量を把握しているからだ。

 おそらく、由伸監督は選手の技量の把握は不得手というか、まだ自信を持って『掴んでいる』とは言えないのだろう。ただ、これは年数を重ねれば培えるというものではなく、センスも必要になってくる。だから、コーチ経験がなくても、監督が務まる人は務まる。もし由伸監督が人心掌握術を苦手としているのなら、彼に代わってやれる側近が大事になる。今の巨人ではそのあたりが、はたして機能しているのかどうか、正直、疑問である。

 いずれにしても、監督に求められるのは危機管理能力である。勝っているときはノリノリで、采配だって面白いように決まるものだ。でも、ひとつ歯車が狂ったら、まるで裏目になる。13連敗でストップさせた試合後、由伸監督は「ひとつ勝つことの難しさを学んだ」というコメントを口にしていたが、本当に腹の底から感じたものなのか。もしそうだとしたら、それは今後の戦いのなかで見えてくるだろう。

(つづく)

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