マニー・ラミレス「土佐日記」。
レジェンドが高知で送った幸福な日々

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

「2時から並んだんだけど、取れなかったよ~」

 ネット裏の記者席に嘆き節が響く。5月28日高知市営球場、四国アイランドリーグplus最終戦。普段は閑散としているこの球場が、この日、久しぶりに沸いた。

チームメイトから送られたバースデーケーキを手にし、笑顔を見せるマニー・ラミレスチームメイトから送られたバースデーケーキを手にし、笑顔を見せるマニー・ラミレス「マニーが高知にやってくる」

 メジャー通算555ホーマーのレジェンド、マニー・ラミレスの説明はいまさら不要だろう。その言動から何かと世間を騒がせた男が、4年ぶりに現役復帰。その上、プレーする場所に選んだのが日本の独立リーグとあって、最初はほとんどのファンが半信半疑だったに違いない。そんな周囲の不安をよそに、今年3月、マニーは本当に高知にやってきた。

 キャンプ中に気が変わって帰ってしまうのではないか......という噂も飛び交うなか、無事に開幕戦に出場したかと思えば、翌日には"職場放棄"。それでも球団は「マニーはマニー」というアメリカ球界の格言を受け入れ、彼を好きなようにさせた。そんな球団の姿勢に気をよくしたマニーは、精一杯のプレーで応えた。

「彼は本当に一生懸命やってくれましたよ。開幕戦、最初の打席で三振したあと、振り逃げを狙って全力疾走ですよ。そのあと肉離れで戦線離脱したけど、それこそが全力プレーの証拠ですよ」

 高知ファイティングドッグスのオーナー・北古味鈴太郎(きたこみ・りんたろう)は、マニーの現役復帰が単なる気まぐれではなかったと確信している。そんなマニーの真摯な姿勢が、チームメイトやファンに伝わるのに時間はかからなかった。ある選手はこう語る。

「見習うところ? 全部です。人格的にもホント素晴らしかった。とにかくあれだけの選手ですから、いてくれるだけでベンチが明るくなりました」

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