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「今年ダメならその先はない」。
泥だらけのプリンス・堂林翔太の覚悟 (3ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 広島復帰が決まった2015年シーズン前、用具メーカーで対面した際に新井は「若い頃の自分に似ている。これからチームを背負って立つ存在になってほしいという気持ちは、心の奥にあります」と堂林の名前を挙げて期待を口にした。

 チームメイトとなっても、何かと気にかけた。打撃練習を終えた新井が、堂林の打撃練習のときにわざわざベンチまで出てきて打撃を見つめることもあった。弟子入りを志願してからは、全体練習後にマツダスタジアム室内練習場で直接指導をすることもあった。

 同じ右打者で、不器用ながらバットを振り込んで一流選手にまで上り詰めた先輩は、何よりの道標となったことだろう。

「どこまでもついていく」――その覚悟の堂林に護摩行を断る理由などなかった。300度を超える炎を眼前に「声を出さないと気を失ってしまう」と感じていた堂林を引っ張ったのも、となりから聞こえてくる新井の大きな声だった。3日間に及んだ苦行に耐えた。

 進退をかけるシーズンへ。

「今年、結果を残せなければ、その先はない」

 なりふりなど構っていられない。出場の幅を広げるため、昨年秋のキャンプから外野にも挑戦。三塁と一塁も含め、ポジションにはこだわらない。貪欲にチャンスをうかがう。

 ブレイクした2012年から、ここまでは回り道だったかもしれない。それでも、その道程は無駄なことばかりではなかったはずだ。それを証明するのは、結果しかない。護摩木とともに弱かった自分を燃やし尽くし、勝負のシーズンに臨む。

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