門田博光の野球ロマン。「筒香も大谷も、ホームランに恋をしろ!」

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by AFLO/Okazawa Tatsuro

 各地から自主トレのニュースが伝わり始めていたある日の午後。ホテルの喫茶室で門田博光はぼやいていた。話題は、最近流行りの球団の枠を越えて選手たちが行なう自主トレについてだった。

現役時代、歴代3位の567本塁打を放った門田博光氏現役時代、歴代3位の567本塁打を放った門田博光氏「ワシらの時代の者には理解できんわ。4月から戦わなあかん相手と一緒に練習をやるって、どういう心境なんや。それにな、話を聞くプラスはあるやろうけど、ひとりで思考をめぐらす時間がないやないか。振り返る時間をなくして、どうやって改革に入っていけるんや」

 門田は"改革"という言葉を好む。たとえば、「オフに1回、バッティングを壊して作り直すんや。自分を改革せな、去年より上には行かれへんのや」という風に、会話のなかでしばしば登場する。

 門田が現役を過ごした時代とは、オフの風景も様変わりした。そこは承知しながらも、伝わってくるニュースに触れると、つい言わずにはおれなくなる。

「カンカンに熱うしてや」とリクエストしたコーヒーを口に運ぶと、門田は「いまの選手は練習しすぎなんや」とこぼした。

「シーズンが終わったらすぐに秋季キャンプをやって、年が明けたら自主トレ、キャンプ......。これじゃ、コーチ以外に教えてもらう"野球哲学"を学ぶ場がないやないか。それでホームランが打てるのか? 答えはノーや」

 突如、会話のなかにホームランが飛び込んできた。門田曰く、「自分を振り返る時間がないと、ホームランは打てない」と。

「ホームランを打つには哲学がいるんや。ゆっくりシーズンを振り返る時間もなく、みんなと一緒に練習して、それにイベントにも出て......。それでどうやってホームランが打てるんや」

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