2016.05.10

ナックルボーラー大家友和、「魔球」を究めるプロ23年目の挑戦

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

「なにも決めてないですね。決めなきゃならないことでもないですし」

 大家友和は自身の”この先”についてこう語る。野球の最高峰・メジャーリーグでの通算51勝は日本人投手として4位。在籍10シーズンを超えたのは、大家のほかには野茂英雄とイチローしかいない。はたから見れば、もう十分に野球をやり尽くしたようにも思えるが、大家はプロ23年目(1年のブランクを含む)のシーズンを、おもに若者が集う独立リーグで迎えている。

日本人4位となるメジャー通算51勝を挙げている大家友和

 5月4日、富山砺波チューリップスタジアム。ルートインBCリーグ公式戦の富山GRNサンダーバーズ戦の先発マウンドに立った福島ホープスの大家は、キャッチャーの構えるミットに遅球を投げ込んでいた。帽子の裾からのぞく頭髪に白いものが混じっているのは、スタンドからでもよくわかる。

 そのフォームからは躍動感が伝わることはなかった。大家の球を受ける高卒2年目の捕手・久岐志衣磨(くき・しいま)はふた回り年下だという。大家が最後にメジャーのマウンドに立ったとき、彼はまだ小学生だったというから、記憶にはメジャーリーガーとしての大家の姿はほとんどないかもしれない。

「大家さんは難しいですよ」と久岐は言う。歳の差がありすぎてコミュニケーションが取りづらいという類の話ではない。大家が投げる遅球を受けるのがひと苦労だというのだ。

「9割がナックルです。特に細かいコースは要求していません。もともと、どこに行くかわからない球ですから。これに、ストレートとツーシームをはさみ込みます」