ナックルボーラー大家友和、「魔球」を究めるプロ23年目の挑戦 (4ページ目)
さらに、強風のなかでのマウンドは、つい2カ月前に不惑を迎えた体にはそれなりに負担になっていたに違いない。マウンドを降りた大家の疲労感が心地いいそれに代わったのは、後続のリリーフが富山打線を1点に抑え、チームが勝利してからのことだった。
「野手がよく守ってくれましたからね。この風のなか、内野手も外野手もいいポジショニングで、最初から気持ちを切らさず、普段捕れないような打球もさばいてくれていたので……。今日は僕というより、チーム全体がやってくれた。僕はいつも通り、淡々と。それだけです」
大家がナックルボールに活路を見出すことを決めた2年前、その姿を目にしている。そのとき、試合前のブルペンでキャッチャーはこうつぶやいていた。
「普通に投げた方がいいのに……」
その言葉通り、その試合で大家は制球に苦しんでいた。あのぎこちなかったマウンドの姿は、今はもうない。
「あの頃に比べると、上達していると思います。コツですか? つかんでいるのかどうか。そう思っても違うかもしれませんし……。このボールについては、ずっと模索し続けると思います」
その先には、もう一度、上のリーグでプレーするという目標はあるのだろうか。あるいは、ナックルボールを極めることが、現役としての最終ゴールなのだろうか。
「もちろん、よりレベルの高いバッターと対戦してみたいという思いは強いですね。今日も野原と対戦できましたし。でも、先のことはわからないです。今、ここでチャンスをいただいていて、一生懸命やっている。それ以上でも以下でもない。今やれることをやるだけ。この先どうこうというのはないですね」
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