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武田翔太「やる気のないフォーム」が生んだ150キロと魔球 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そして武田は「最近、高校時代の動画を見つけたんですよ」と言って自身のスマートフォンを取り出し、動画を再生し始めた。そこに映っていたのは、高校3年夏の宮崎大会で投げる武田の姿だった。

「うわ、やる気ねぇなぁ~。ほら、見てください、このカーブとか、めっちゃやる気ない投げ方しているでしょ?」

 そして、こうも言った。「大谷(翔平)の高校時代に比べれば、下(げ)の下ですね」。

 たしかに力感のないフォームで、見る人によっては「やる気がない」と思われてしまうのかもしれない。しかし、リリースの瞬間にはマッチで点火するような爆発力を感じた。「やる気のないフォーム」という言葉を真に受けてしまうと、武田翔太という投手の本質を見誤ってしまうことになる。

「やる気がないように見えるのは、わかっていてやっているんです。100パーセントの力で投げる150キロと、60パーセントで出る150キロだったら、60パーセントのほうが速いですから」

 風を受けた柳のような、武田の軽やかな受け答えもまた、自身の投球スタイルが反映されているように感じられた。

 そして、ここでもうひとつ気になっていたことを武田に聞いてみた。「カーブは、いつからこんなに曲がるようになったんですか?」と。今や武田の代名詞とも言える「ドロップカーブ」だが、高校1年秋に見た当時は、カーブよりもタテに大きく落ちるスライダーのほうが目立っていた。

「あぁ、今のカーブは、もともとスライダーだったんですよ」

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