阪神ドラフト1位・横山雄哉が持つ「天賦の才」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 昨年夏の都市対抗野球大会でのことだ。全足利クラブVS松山フェニックスという、都市対抗では珍しいクラブチーム同士の対戦は終盤を迎えていた。実はこの試合、お目当ての左腕投手がいた。それが全足利クラブの補強選手・横山雄哉(新日鉄住友金属鹿島→阪神)だった。

昨年のドラフトで阪神から1位指名を受け入団した横山雄哉昨年のドラフトで阪神から1位指名を受け入団した横山雄哉

 なかなか出番が回ってこなかったが、2点ビハインドの8回表、一死からようやく横山がマウンドに上がった。そして横山はここから圧巻の投球を見せる。ひとつ四球を出したものの、残りのアウト5つをすべて三振に仕留めてみせたのだ。それも勝負球はすべてストレート。捕手のミットに入ってからスイングしているように見えるシーンも何度かあった。それほどに、横山のストレートは"生命力"に満ちていた。

「あの時もあんな感じだったなぁ」

 そうつぶやきながら、私は2013年のある夏の日のことを思い出していた。

 その日、『流しのブルペンキャッチャー』で、ある社会人投手のボールを受けることになっていた。取材自体は無事に終わったのだが、その後、ブルペンに次々とピッチャー陣がやって来た。

 取材当日、たまたま勤務の都合で部員のキャッチャーが練習にひとりしかおらず、お手伝いという形で他の投手の球も受けることになったのだ。そして、私の前に現れたのが横山だった。

 山形中央高時代の彼のピッチングは何度も見ていた。体が開かず、ゆっくり溜めの時間を作って、右足を踏み込んだ瞬間、一気に体を切り返してくる。スピードガン表示は130キロ前後でも、打者が思わず構え遅れてしまう"体感スピード"を持ったサウスポーだった。そうは言っても、球速は130キロ前後。正直、捕るのに苦労するイメージはなかった。

 そして1球目。思った通り、球持ちのいいゆっくりしたフォームから投げ込んできたのだが、そこからが想像を超えていた。捕球する態勢に入った時には、すでにボールは目の前。「ウワッ」と思った瞬間、ボールはミットを直撃していた。正真正銘の"快速球"だった。

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