兄貴たちが語る「松坂大輔がメジャーで勝てない理由」 (2ページ目)
吉井理人(よしい・まさと):1965年4月20日、和歌山県出身。箕島高から84年にドラフト2位で近鉄に入団。近鉄時代は主にクローザーとして活躍し、88年に24セーブを挙げ最優秀救援投手に輝く。95年にヤクルトに移籍し、先発投手として3年連続2ケタをマーク。98年からメジャーに移籍し、メッツなど5年間メジャーでプレイし32勝を挙げた。その後、日本球界に復帰し、07年に現役を引退。日米通算成績は121勝129敗62セーブ、防御率4.14。08年から5年間、日本ハムの投手コーチを務めた。昨年からロッテ、ソフトバンク、オリックスの主催ゲーム全試合を完全生中継するFOX SPORTS「BASEBALL CENTER」のメインアナリストを務めている。
―― そんな中、かつて石井さんのチームメイトであった松坂大輔(メッツ)投手が苦しんでいます。
石井 日本でやっていた時とは別人ですよね。フォームが全然違います。日本にいる時は下半身をうまく使って投げていたのですが、メジャーに行ってからは横ぶりになり、上半身で投げています。あそこまで変わってしまうんだと、正直驚きました。松坂の場合は、マウンドが合わなかったんですかね。私はメジャーを経験していないので詳しいことはわからないのですが、そのへんはどうなんでしょうか?
吉井 メジャーのマウンドは本当に硬いです。松坂のように下半身を粘らせて投げる投手は、足に相当な負担がかかると思います。だからメジャーでは歩幅を狭めて投げる投手が多いですよね。その方が簡単に投げられますし、上半身も回転しやすい。上原浩治(レッドソックス)もそういう投げ方をしています。ただ、このフォームは上半身に遠心力がかかってしまうため、肩やヒジを痛める恐れがあります。
石井 メジャーのマウンドって難しいんですね。
吉井 それぞれ個人差がありますし、どの投げ方がベストといのはないと思うのですが、日本のマウンドとは明らかに違います。適応するにはそれなりの時間が必要になってきますよね。
石井 もちろん、(松坂)大輔もいろいろと試行錯誤を繰り返しながら、今のフォームにたどり着いたと思うんです。彼は昔から自分で考えることができる人間ですから。それでも、今のフォームはちょっと横ぶりになりすぎている気がします。あの投げ方だとボールをコントロールするのが難しいですよね。
吉井 松坂に限らずメジャーに来てから肩やヒジを故障する日本人投手が多いのは、やはりマウンドの違いが大きいと思います。マウンドが硬いということは、土台の安定につながります。たとえば、砂浜とコンクリートでは、コンクリートの方が投げやすいですよね。土台が安定すると腕は振りやすくなり、いつも以上にパワーが出てしまう。ただ、その分、肩やヒジへの負担は大きくなる。だから、どれが正解かということは言えないのです。理想のフォームを探すのは本当に難しい作業だと思います。
石井 たしかに、今、大輔はメジャーで苦楽を経験していますが、僕はそれでいいと思います。将来的にはコーチや監督になる人材ですから、いろんなことを経験してほしい。しかし、まぁ大輔ももう33歳ですか......。つい最近まで西武のユニフォームを着て投げていたと思っていたのに。大輔よりひと回り以上も年下の大谷(翔平)や藤浪(晋太郎)が投げているんですからね。時の流れを感じますね。
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