4年目の覚醒。山田哲人が「ヤクルトの至宝」になるまで
7月初旬――その日も、ヤクルトの山田哲人(内野手)は、杉村繁打撃コーチと早出練習で汗を流していた。
「これ見てよ!」と、杉村コーチはティーバッティングでバットを振り続ける山田を指さして笑った。
「オールスター選手だもんな! なんか雰囲気が出てきたでしょ」
杉村コーチは山田がオールスターに選出されたことを、自分のことのように喜んでいた。
交流戦で打率.378をマークし、首位打者を獲得した山田哲人。
「ここまでは順調すぎるほど順調だよね。キャンプの時に山田と目的意識を持ってやっていこうじゃないかと話をしたんです。いきなり打率3割はしんどいから、『全試合レギュラー出場と、月30本のヒットを目標にしよう』と。そうすれば、シーズン約6カ月で180本。それだと3割に届くだろうし、首位打者も見えてくるかもしれない。ホームランも月3本打てば20本ぐらいになる、と」
杉村コーチの表情が緩むのも無理はない。ここまで山田は開幕から主に1番を任され、その中でしっかりと結果を残してきた。その数字は、これまで実績のない22歳の選手とはとても思えない堂々としたものだ。
打率/3割3分1厘(リーグ3位)
安打数/117本(リーグ2位)
本塁打/16本(リーグ6位)
出塁率/4割1分5厘(リーグ3位)
長打率/5割5分4厘(リーグ2位)
※7月28日現在
山田は2010年のドラフトで履正社高校(大阪府)からヤクルトに1位指名され入団した。プロ1年目のシーズンは一軍公式戦の出場機会はなかったが、中日とのクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルの第2戦に先発出場。高卒ルーキーがCSにスタメンで出場するのは初めての快挙だった。
「CSの時は、オレは横浜ベイスターズ(現・横浜DeNA)で巡回コーチをしていました。小川監督が山田を抜擢したのは、当時、ヤクルトのショートが手薄だったこともありますが、山田が『僕を使ってください』と直訴したからなんだそうです。その時に、面白い選手がおるなと思ったよね。第4戦では浅尾拓也からタイムリーを打ったし、たいしたもんだよね」(杉村コーチ)
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