DeNA山口俊、西武・十亀は、なぜ先発転向で蘇ったのか?

  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

吉井理人の投究論 第14回

リリーフから先発に転向し、本来のピッチングを取り戻した山口俊。リリーフから先発に転向し、本来のピッチングを取り戻した山口俊。

 今季ここまで何人かの投手がシーズン途中にリリーフから先発に配置転換されました。横浜DeNAの山口俊、ヤクルトの八木亮祐、そして西武の十亀剣......。僕は現役時代、リリーフから先発に転向しましたが、個人的な感覚でいえば、リリーフから先発はやりやすいが、先発からリリーフはかなり難しいということです。彼らも先発からリリーフになってからは不安定な投球が続き、思うような結果を残せずにいました。

 しかし、再び先発に戻り、安定感が増したように思えます。特に山口は、今年6月に約7年ぶりに先発復帰して3連勝。ちなみに、今シーズンの山口のリリーフでの成績は、14試合登板の0勝1敗、防御率7.62。この数字を見る限り、リリーフより先発の方が向いているのかなと思います。

 山口は2012年にプロ最年少で100セーブを達成しましたが、リリーフで投げている時の彼は、「1点も与えてはいけない」という意識が強すぎた印象が強く残っています。気持ちに余裕がなくなり、得意球である真っすぐとスライダーしか投げず、しかも厳しいコースを狙いすぎてカウントを悪くしてしまう。そうしたピッチングが打者を怖がっているように映ったのか、"チキン(臆病者)"と呼ばれていましたが、実際はそうじゃないんですよ。

 生前の伊良部秀輝が"チキン"について、興味深いことを言っていました。伊良部はメジャーで投げていた時に、「チキン」について独自調査をしたらしいんです(笑)。伊良部は僕に、「吉井さん、チキンと呼ばれる投手は打者を恐れているわけじゃないんです。慎重になりすぎるあまり、打者でなく他のことと戦ってしまっているんです。ベンチにいる監督はどんな顔をしているのかなとか、あのコースに投げるにはこう腕を振らなきゃいけないとか......」と言ってきました。確かに、僕が投手コーチをしている時も、チキンと呼ばれていた投手はそういう傾向がありました。バッターと勝負せず、自分自身やベンチと戦ってしまうんです。

 でも、先発のマウンドに立つ山口を見ると、リリーフの時とは違ってゆとりを持って投げていますよね。リリーフの時はなかなかインコースを突けなかったのですが、今はしっかりと投げ込んでいます。それにスローカーブを投げたり、ピッチングスタイルがまったく違う。やはり、先発は自分でゲームを作れますから、たとえ1点を取られてもやり直しがきくんです。

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