復活のマウンドへ。斎藤佑樹が導き出したひとつの答え

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 見ていて、腹が立ってきた。

 なぜか全国的に突然、暑くなった5月29日、西武第二球場でのことだ。真夏のような陽射しが照りつけたかと思えば、あっという間に黒雲が広がり、雷鳴が轟(とどろ)く。そんな不安定な空模様よりもさらに不安定だったのが、この日の斎藤佑樹のピッチングだった。

3カ月ぶりに一軍のマウンドに立つ斎藤佑樹。3カ月ぶりに一軍のマウンドに立つ斎藤佑樹。

 スコアブックを辿(たど)ってみる。

 初回、ライオンズ打線に投じた23球のうち、低めにワンバウンドしたボールが6球もあった。2回こそ1球もなかったが、3回には3球、4回にも6球、5回には4球、6回に1球。この日、投げた94球のうち、20球がワンバウンドだったのだ。

 いや、何もワンバウンドがすべてダメだというわけではない。

 低めを突いたキレのある変化球がワンバウンドになるのは珍しいことではない。思わずバットを出してしまうようなタテのスライダーやフォークがワンバウンドになれば、それはピッチャーにとってとてつもない武器になる。

 しかし、この日の斎藤の投げたワンバウンドは武器でも何でもなかった。

 20球のワンバウンドのうち、バッターがバットを出したボールは1球もない。20球はすべてボール球だった。

 なぜ、ワンバウンドになるほど、低い変化球を投げる必要があるのか。

 そんなに慎重にならなくても、力のあるストレートを投げているのに。

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