選手たちは「飛びすぎる統一球」の存在に気づいていた
昨年、日本プロ野球機構(NPB)は、球団や選手、ファンに内緒で"飛ばないボール"から"飛ぶボール"に変更していた。そして6月にこの隠ぺいが発覚し、加藤良三コミッショナーの引責辞任にまで発展する騒動となった。
4月6日の試合で2打席連続本塁打を放ったロッテの清田育宏。
そして2014年、プロ野球が開幕。だが、どうも様子がおかしいのである。前年のボール変更である程度「飛ぶ」と理解してはいたが、明らかに「飛びすぎる」のである。事実、昨年は開幕から5日目(27試合消化)の時点で22本塁打だったのに対し、今年は5日目(29試合消化)で50本が乱れ飛ぶなど、ホームランが急増した。
言うまでもないが、昨年も開幕から「飛ばないボール」ではなく、こっそりと「飛ぶボール」使っていた。それにもかかわらず、である。
4月5日、神宮球場で行なわれたヤクルト対阪神戦。5回表、阪神の攻撃で右打者マートンが放った打球はふらっとライトに舞い上がった。誰もが「ライトフライか」と思った瞬間、打球はスタンド最前列に飛び込んだ。
この日の試合は両チーム合わせて30安打、23得点、3本塁打の打撃戦。翌日も壮絶な乱打戦に記者席から「ボールが変わっているから。絶対に飛ぶボールだよ」という声が上がっていた。さらに記者室にあるテレビモニターからは、「僕はボールが飛ぶような気がします」という、プロ野球解説者・梨田昌孝氏の声も聞こえてきた。
昨年の"飛ぶボール"は"さらに飛ぶボール"になっているのか。まずは、真相を確かめるべくマートンにホームランを打たれた石川雅規のもとを訪れた。
―― マートンのライトへの打球。まさかホームランになるとは思いませんでした。
「うーん、そうですね(苦笑)。ただ、あとで映像を見たらボールも甘かったし、しっかりと捉えられていた。なので、ボールが原因なのか、今はちょっとわからないですね(笑)。ただ現実として、ボールが飛んでいるのは数字にも出ていますし......。事実として、これまで飛ばないボールを使用していた時期があり、それに対応するため打者のレベルが上がったということも考えられるんじゃないですかね」
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