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松井裕樹だけでなく......。甲子園で輝いた「背番号1」のプライド (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 では、この夏はどうだったか。

 地方大会の決勝戦まで、他のピッチャーに一度としてマウンドを譲ることなく、勝ち上がってきたエースは、全国に12人いた。

 北北海道/準優勝:辻本響(旭川南)
 秋田/準優勝:相馬和輝(角館)
 山形/準優勝:佐藤大(米沢中央)
 栃木/準優勝:沢田大季(青藍泰斗)
 山口/優勝:高橋由弥(岩国商)/準優勝:浜本翔(高川学園)
 徳島/優勝:板東湧梧(鳴門)/準優勝:上田優介(川島)
 香川/優勝:宮崎耕大(丸亀)
 佐賀/優勝:古川侑利(有田工)/準優勝:黒岩佑丞(早稲田佐賀)
 熊本/優勝:山下滉太(熊本工)

 この中で甲子園に出場できたのは、5人。

 そして最後まで勝ち残り、誰よりもエースの矜持(きょうじ)を示したのが、鳴門の背番号1、板東湧梧(ばんどう・ゆうご)だった。

 渦潮を生む急な潮の流れに揉まれた、鳴門海峡のマダイ。

 よく引き締まった、しかも甘い身の鳴門鯛の刺身はこたえられない。鳴門では鯛の身を傷つけないよう、「タイ網」や「一本釣り」での漁が行なわれているのだという。そんな鳴門鯛のイメージが重なる、じつにスマートなピッチングを夏の甲子園で披露した鳴門のエース、板東湧梧に会うために、徳島へと飛んだ。

 まずは板東に、ひとりで投げ抜いて、しかも最後まで勝ち残っていたエースだったことを告げると、彼はマウンド捌きそのままに、涼しい顔でこう言った。

「それは……嬉しいです(笑)。最後まで投げ抜いたって感じがしますからね。ただ、甲子園で投げている時から『ずっと一人で投げてきた』とよく言われましたけ ど、そんなにすごいことだとは思わなかったんです。僕のイメージからして、甲子園では昔から一人で投げてるピッチャーが多かったんで……斎藤佑樹投手とか田中将大投手は、ひとりで2試合連続、投げてましたし、それが普通なのかなと思ってました」

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