2013.11.11

懐かしい顔がいっぱい。トライアウト2013

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

プロ野球「行く人、来る人」2013

 11月10日に行なわれた今年の12球団合同トライアウト(第1回)は、雨が予報されていたため、当初の予定より30分前倒しした午前10時にスタートした。突然の変更に、ブルペンで投球練習を開始しようとしていた山本省吾(35歳)は、スタッフに向かって怒号とも焦りともとれる言葉を発していた。石川県・星稜高校卒業後、慶應大、近鉄、オリックス、横浜と渡り歩き、今年は福岡ソフトバンクに所属した山本は、4人の打者と対戦するシート打撃で3番目の登板予定だった。

トライアウトについての説明を受ける選手たち。今年は65人が参加した。

「間に合わないっす! あと何分ですか! まだ10分はあります? 大丈夫です。いけます。ふぅ、焦ったぁ」

 トライアウトを受ける選手の多くは、所属球団から戦力外通告を受けたあと、わずかな準備期間で野球人生初のサバイバルレースに参加する。要領を得ず戸惑うのも仕方ない。球界への生き残りをかけたラストチャンスに、十分な調整ができぬまま臨むのはあまりに不本意だろう。山本が苛立ったのも無理はない。今年7月に左ヒジのクリーニング手術を受け、4カ月ぶりの実戦登板だった山本は4人の打者を無安打に抑え、小雨が降り始めたマウンドを降りた。すぐに着替えて帰路に就こうとした山本を掴まえると、快活な言葉を残した。

「ちょっと戸惑いましたね。(シート打撃の)カウントが1ボール1ストライクから始まるのも、マウンドに上がって初めて気付きました。でも、自分の力は出せました。まだまだいけるでしょ? NPBの12球団以外は考えていません。さすがにオランダとかには行けないんでね(笑)」

 12球団合同トライアウトは、いまやシーズンオフの慣例行事だ。年を追うごとに多くのファンが詰めかけるようになり、今年は静岡県と静岡市がNPBとの共催に名乗りをあげてリニューアルされたばかり草薙球場での開催が決まった。

 参加者は65人(投手36人、野手29人)。例年、トライアウトでのプレイが各球団の編成担当者らの目に留まり、新天地が決まる選手というのはごくわずかである。それでもこれほど多くの野球人が集うのは、トライアウト受験を野球人生のけじめと考える選手が多いからだ。