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【プロ野球】「もう一度、野球がしたい」――男たちのトライアウト2012

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

打者4人に対し2つの三振を奪った一場靖弘打者4人に対し2つの三振を奪った一場靖弘 日本プロ野球界に居場所を失った男たちが集う12球団合同トライアウトは、いまや秋恒例の一大イベントである。野球ファンだけでなく、テレビ各局のクルーが集結し、多くの記者たちが足を運ぶのは、限られたチャンスの中で、必死に這いつくばる選手たちの姿があるからだ。シーズン中にはない、現役への生き残りをかけた個と個の悲喜があるからこそ、見る者を惹きつけてやまない。

 なかでも、絶大な期待を集めて入団しながら、大成できずに戦力外通告を受けたドラフト上位選手にどうしても目が向かう。

 朝井秀樹(2001年/近鉄ドラフト1位)もそのひとりだ。近鉄、楽天、巨人と3球団を渡り歩き、巨人移籍1年目の2010年にはクライマックス・シリーズで先発を任されるなど期待されたが、その後の2シーズンは一軍登板がなく、戦力外となった。今回のトライアウトでは、四国・九州アイランドリーグの香川オリーブガイナーズのユニフォームを着たPL学園時代の同級生・桜井広大(01年/阪神ドラフト4位)と会場であるクリネックス・スタジアム(Kスタ)で再会するという不思議な縁があった。朝井に「高校時代の同級生をともにトライアウトを受けることで、特別な感慨はあるか」と訊ねると、こう言い放った。

「他人のことは関係ないっす。自分がどう生き残るか。それしか考えられません」

 この朝井をはじめ、今年は37人の投手と、20人の野手がトライアウトに参加した。テストはシート打撃形式で行なわれ、それぞれカウント1-1から投手は打者4人を相手に投げ、野手は守備につきながら計7打席立つ。

 シート打撃開始後、胸が締めつけられる場面に遭遇した。ふたり目の投手としてマウンドに上がった2004年のセ・リーグ新人王で、今季から楽天に移籍していた川島亮(2003年/ヤクルト自由獲得枠)は、ストライクが思うように入らず、3者連続して四球を与えてしまう。4人目の打者には甘く入ったストレートをレフト前に弾かれ、川島のトライアウトは終了した。降板後、すぐにバックネットからベンチ裏に向かってコメントを拾おうとしたが、すでに川島の姿はなく、再び報道陣の前に姿を見せることはなかった。

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