2012.08.29

【プロ野球】「優勝して胴上げを」――鷹ナインが語る小久保裕紀への思い

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

8月14日に今シーズン限りでの引退を表明した小久保裕紀 福岡ソフトバンクホークスがここにきて快進撃を見せている。一時は5位に低迷し、6月6日には首位に10.5ゲーム差も引き離された。それから1カ月後の7月5日時点でも首位とは10ゲーム差。ところが8月に入りチームは急浮上。8月28日現在で順位は3位ながら首位まで2ゲーム差と接近し、大逆転でのリーグ3連覇も射程圏内にとらえた。

 きっかけは8月14日、小久保裕紀の今シーズン限りでの引退発表だった。この日は本拠地ヤフードームでロッテとの試合が行われており、試合直後の会見までは球団でもごく一部の人間しか知らず、ユニフォームを着ている者でこのことを知っていたのは監督の秋山幸二だけだった。そして選手たちには、試合後に小久保の口から直接伝えられた。しかし、あまりに突然の報せに誰もが言葉を失ったという。選手会長の本多雄一も「とにかくびっくりしました」とその瞬間を振り返る。ただ、「ひとりひとりがいい意味で衝撃を受けたと思う」とも話した。

「小久保キャプテンのためにも優勝で終わりたいというのが正直な気持ち。小久保さんも何らかの意味があってこの時期に発表したのだと思う。それを感じて、理解して、これからの試合を戦っていきたい。何としてもいい形で小久保さんを胴上げしたい」(本多)

「なかなか気持ちの整理がつかない。ただただ残念です。子どもの時から見ていた方ですし、今、同じチームでプレイしていることに幸せを感じています。最後はみんなで喜びあえるように頑張りたい」(内川聖一)

「小久保さんには一昨年のアリゾナ自主トレに帯同させてもらいました。本当に妥協のない人だなと改めて感じたのを覚えています。最後まで1勝1勝を積み重ねていきたい」(長谷川勇也)

 小久保キャプテンをこのまま引退させるわけにはいかない――チームメイトの思いは、すぐに結果となって表れた。8月15日から今季最長となる7連勝をマークし、最大6あった借金を返済。5月26日以来となる貯金生活に突入した。

 なにより連勝の始まり方が劇的だった。小久保自らが「後継者」と指名した若手がチームに勢いをもたらしたのだ。それがプロ2年目の柳田悠岐だ。昨年のウエスタン・リーグで本塁打王を獲得するなど、小久保が認めた未来のクリーンナップ候補である。