【プロ野球】プロ初登板で見せた、歳内宏明「虎のエース」への可能性

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

プロ初先発となった9月2日の広島戦で5回1失点と好投した歳内宏明プロ初先発となった9月2日の広島戦で5回1失点と好投した歳内宏明 9月2日、デーゲームで巨人が横浜DeNAに勝利し、阪神の優勝の可能性が消えた。だがその夜、甲子園に集まった虎党は久しぶりの熱狂に包まれた。時間切れによる引き分け寸前で、飛び出した新井良太のサヨナラ2ラン。興奮冷めやらぬヒーローがお立ち台で喜びを爆発させている頃、プロ初登板を果たしたもうひとりのヒーローはベンチ裏で記者たちの質問に答えていた。

「最初は少し緊張しましたけど、2回からはリラックスして投げられました。(一軍のマウンドは)もっと違うのかなと思いましたけど、そこまでではなかったです」

 サヨナラ劇に気持ちが高まるでもなく、初仕事を終えた安堵感を滲(にじ)ませるでもなく、いつもの淡々とした歳内宏明の姿があった。ここまでファームで9試合に投げ4勝2敗、防御率2.32の成績を挙げていた。8月25日に先発したソフトバンク戦から中6日での一軍初マウンドは、持ち味を随所に見せる内容だった。

 初回、先頭の東出輝裕にいきなり142キロのストレートをセンター前に弾き返された。2番の菊池涼介はスプリットで空振り三振に打ち取るも、天谷宗一郎、エルドレッドには連続四球で一死満塁。しかし、ここから丸佳浩をサードファウルフライ、堂林翔太をショートゴロに仕留めた。走者を背負ってからの勝負強さはプロの世界でも変わらなかった。

 思えば、プロ初実戦となった4月14日の日本新薬戦(鳴尾浜で行なわれた育成試合)もこんな感じだった。いきなり相手選手にデッドボールをぶつけ、そこから二死満塁まで攻められた。しかし、「腕を振ることだけ考えた」と後続を断つと、3回を無失点。そして試合後、こう振り返っていた。

「初回はボールがばらついていましたが、ランナーを出してからピンチはしのげたので、そこは良かったと思います」

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る