【プロ野球】叩きのめされても這い上がってくるヤクルト・赤川克紀のプロ根性

4月21日の巨人戦でプロ初完封を飾った赤川克紀4月21日の巨人戦でプロ初完封を飾った赤川克紀安倍昌彦の投魂受けて~第17回 赤川克紀(ヤクルト)

 2009年の秋のことだった。

「安倍さん......」

 後ろから、そう声をかけられたような気がして振り向いたら、そこに立っていたのは赤川克紀だった。しかし彼の表情に、1年前にボールを受けたときのような生気はなかった。そして、人相が変わるほど、ゲッソリとやつれていた。

 入団1年目、宮崎商業高からヤクルトに1位指名された赤川克紀は「プロの洗礼」を嫌というほど浴びていた。

 イースタンリーグで先発しても、5回までなんとか抑えたかと思えば、その次の登板では2回も持たずに大炎上。

 シーズン終盤の「一軍体験登板」となったプロ初マウンド。6点ビハインドの9回に登板したが、打者4人に対してホームランを含む3安打、1四球。さらに、パニックの中でワイルドピッチも2回。気がついたら3点を奪われ、マウンドで呆然と立ちつくしていた。ひとつのアウトも取れず、1年目の一軍成績の防御率は計測不能の空欄になってしまった。

「プロって厳しいっすね、やっぱり......。ひどい目に遭っています」

 消え入るような声だった。それでも、秋季キャンプの練習の合間に、後輩の試合に顔を出すぐらいだから、"心の火"までは消え去っていなかったのだろう。

 内心、ホッとした。

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プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。

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