【プロ野球】ヘビのように曲がるロッテ・中後悠平のスライダー
4月22日の西武戦でプロ初勝利を挙げた中後悠平安倍昌彦の投魂受けて~第16回 中後悠平(ロッテ)
4月30日のソフトバンク戦。先発のルーキー・藤岡貴裕を7回からリリーフした中後悠平。そのピッチングがすごかった。
3点のリードを同点にされ、すぐに1点奪ってソフトバンクを突き放した直後、取り戻した小さな流れを「確固たる流れ」にしたい場面だ。ここで、ルーキー・中後はどうしたか。
スライダー、スライダー、またスライダー。
徹底的に『切り札』で攻め続けた捕手・里崎智也もプロフェッショナルなら、懸命についていった中後もまた、『プロ』の片鱗がキラリと輝いていた。
対した打者は4人。詰まった内野安打に送りバント、明石健志、福田秀平の左打者の1、2番はスライダーの変化に目がくらんだように内野ゴロと空振りの三振。ソフトバンク打線を完全に翻弄した。
その1カ月前。3月31日に一軍初登板を果たした中後。この記念すべきプロデビュー戦。実は、この時のスライダーはもっとすごかった。
1点リードの8回。緊張の場面で、しかも一死満塁。どう考えたって、ミスキャスト!何が危なっかしいって、中後のコントロールほど危なっかしいものもない。四死球を出せば押し出しで同点となる場面。試合の流れが劇的に変わってしまっても不思議ではない。
ところが、中後は頑張った。
この試合すでに3安打の1番・聖沢諒、2番・快足の内村賢介を伝家の宝刀・スライダーの連投で二者連続三振に打ち取ったのだ。内村が三振したひとつ前のスライダーは、空振りした右打者・内村の右足を直撃したものだった。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年宮城県生まれ。早大学院から早稲田大へと進み、野球部に在籍。ポジションは捕手。また大学3年から母校・早大学院の監督を務めた。大学卒業後は会社務めの傍ら、野球観戦に没頭。その後、『野球小僧』(白夜書房)の人気企画「流しのブルペンキャッチャー」として、ドラフト候補たちの球を受け、体験談を綴っている。